2022年から新しい科目である「歴史総合」がスタートします。今までの「日本史B」「世界史B」といった枠組みとは全く違う「歴史総合」。いったいどのような科目なのでしょうか。
今回は「歴史総合」の内容や特徴、「歴史総合」の問題で問われる能力、日本史B・世界史Bにかわる「日本史探求」「世界史探求」について解説します。
「歴史総合」って何？
歴史総合は2022年からスタートする高校の学習指導要領によって設置が決められた科目です。「歴史総合」ではどのような力を育てたいと考えているのでしょうか。
2022年に始まる新学習指導要領による変更
2022年から始まる学習指導要領において、地歴科、特に歴史科目は大きな変更が加えられました。変更前の科目構成は以下のとおりです。
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日本史A |
幕末から現代までの日本史 |
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日本史B |
古代から現代までの日本史 |
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世界史A |
大航海時代から現代までの世界史 |
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世界史B |
古代から現代までの世界史 |
これらのうち、日本史Ａと世界史Ａを統合したのが「歴史総合」と考えるとよいでしょう。あとで詳しく書きますが、日本史Ｂは日本史探求、世界史Ｂは世界史探求として残されます。
また、これと並行して「地理A」は「地理総合」となり、歴史総合と並んで必修科目となりました。これで、地理・歴史の両方が必修となる体制が出来上がります。
ちなみに、歴史総合が出来上がった背景には近現代史の学習不足や日本史必修化を求める動きなどがありました。これらの問題を解決するために生み出されたのが「歴史総合」だといえるでしょう。
「歴史総合」で育てたい力
新しい科目である歴史総合はどんな力を育てるために作られたのでしょうか。一言でいえば、「丸暗記」を止めて時期や推移などに注目し、歴史的出来事の原因や結果を考えさせたいというものです。
出来事の順番や出来事の背景・原因・結果、現代とのつながりなどについて深く考えさせたいという狙いが見えてきます。今までの歴史科目と比べると「なぜ？」「どうなった？」といった理由を理解することが大事だとされています。
加えて「資料の読み取り」を重視しているのも歴史総合の特徴です。これまでの日本史Bや世界史Bでも資料問題は出題されていましたが、今後は、資料から読み取れる内容を問う出題が増えるかもしれません。
資料を重視する理由は「資料に基づいて歴史が叙述されていること」を学ばせるためです。学問としての歴史は「資料」という証拠に基づいて研究されていることを踏まえ、資料が作られた経緯や資料の信用性などを吟味する姿勢も求められているのです。
「歴史総合」の特徴
歴史総合は日本史Aや世界史Aを統合した科目といった性格を持っていますが、それだけではありません。
新学習指導要領では「近代化（産業・貿易の発展過程など）」「大衆化（大衆の政治参加、女性の地位向上など）」「グローバル化（人や情報の移動など）」なども重視しています。
日本史や世界史を単独で学ぶのではなく、相互に関連付けて学ばせたいという新指導要領の意図が読み取れます。「テーマ」別の学びも従来より重視されます。
たとえば、明治時代の日本産業を支えた「製糸業」や「紡績業」が社会をどのように変えたのかといった大きな視点も必要となるでしょう。
「歴史総合」はどのように出題される？
歴史総合は2022年4月からスタートする科目であり、その時の高校1年生が3年生になる2025年度共通テストではじめて出題されます。これに先立って、大学入試センターでは歴史総合のサンプル問題が公表されています。
まず、目につくのは単純暗記で解ける問題の少なさです。従来の入試問題は教科書の太字を暗記していれば最低でも60点前後とれるように作られていました。しかし、歴史総合の問題では歴史用語より、資料の読み取りや資料の意味、出来事の順序、用語の意味がわからなければ解きにくいように作られています。
この問題を解くには、メモ中の「北爆」という単語からベトナム戦争であることを読み解き、ベトナム戦争が起きていた1965年〜1975年に日本で起きていた出来事として沖縄返還を連想する必要があります。
1965年：ベトナム戦争開始、1972年：沖縄返還と単語だけ覚えていても、全く太刀打ちできない問題といえます。
また、「自由」について記した4つの資料（リンカン大統領のゲティスバーグ演説、青鞜の序文、フランス人権宣言、ガンディーが行った反英闘争の演説）の中で用いられた自由の意味を問う問題も単純暗記で解くのは困難です。
つまり、歴史総合を解くには暗記力以上に読解力と資料の理解力、物事を筋道立てて考える力が必要になるのです。
「日本史B」「世界史B」はどうなる？
これまで、入試科目として最も利用されてきたのは「日本史Ｂ」や「世界史Ｂ」です。歴史総合が導入された後、「日本史Ｂ」は「日本史探求」に「世界史Ｂ」は「世界史探求」にそれぞれ変更になります。
試験範囲は従来の日本史B・世界史Bと変わりませんが、出題形式は大きく変更される可能性があります。歴史総合が暗記よりも理解や論理性、資料読解力を重視しているため、日本史探求や世界史探求でも歴史総合のような出題パターンが増える可能性があるからです。
その場合、従来型の暗記一辺倒の勉強では高得点がとりにくくなります。共通テストで9割以上をマークするには教科書の太字だけではなく、因果関係について説明した部分や出来事の順番・整合性などにも着目し歴史を「理解」する意識を強く持たなければなりません。
まとめ
今回は「歴史総合」についてまとめました。歴史総合は2022年からスタートした新しい科目で従来の日本史A・世界史Aに変わるものです。しかし、単純にそれらの科目を統合しただけではなく、暗記よりも理解を重視する傾向が色濃く見えます。
今後は暗記科目といえども、単純暗記だけでは高得点は取れません。自分で教科書をしっかり読み込む「自学自習」が重要になってきます。これをふまえると、教えられるよりも自ら学ぶ武田塾のような学習塾の存在意義が増すのではないでしょうか。
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