近年注目を集めているのが、高校と大学が共同して教育を行う「高大連携」です。
もともとは大学の付属高校を中心に行われていた取り組みでしたが、最近の大学受験状況の変化に伴って付属校以外でも積極的に導入されています。
今回は、高大連携とはいったいどのようなものなのか、高大連携と指定校推薦の違いは何なのか、高校側・大学側のメリットなどを含め詳しく解説していきます。
高校生の皆さんや高校を選んでいる中学生の皆さんにとっても今後重要になってくる情報だと思いますので、ぜひご覧ください。
急速に進む高大連携とは?
高大連携とはその名の通り高校と大学が連携して教育を行うことです。
高大連携の方法は学校によって様々ですが、基本的には大学の講義を高校で受講できるというやり方が多いです。
高大連携は、今までは大学の付属高校を中心に行われていました。
理由としては、大学の付属高校であるため連携がしやすいことや付属高校の生徒さんは系列大学への推薦枠が利用できるためほかの高校生よりも時間があることが挙げられます。
高大連携と指定校推薦の違い
では、高大連携と指定校推薦はどう違うのでしょうか?
指定校推薦は、大学が基準を示すため一方通行の関係になりやすく、入学後のミスマッチが生じやすいことが問題として挙げられます。
高大連携は指定校推薦とは違い、高校生が受験前に大学の講座や行事に参加するなど大学のことをよく知ることができるため双方向にコミュニケーションを取れます。
そのため高大連携と指定校推薦の最も大きな違いは入学後のミスマッチ率・満足度の違いだと言えるでしょう。
高大連携が広まっている背景
今までは大学の付属高校で行われていた高大連携ですが、最近は普通の高校でも広まっています。
高大連携が急速に広まっている背景には”少子化”と”有名私立大学の難化”という2つの要因があります。
この項目では高大連携が広まっている背景について詳しく解説していきますので、ぜひご一読ください。
背景①少子化の影響
まず、近年は大学進学率自体は高くなっているものの、少子化の影響で高校生・大学生の数は少なくなってしまっています。
大学としては学生が集まらなければ経営が成り立たないためなるべく多くの学生を集めたいところですが、少子化の影響でなかなか人が集まりません。
高校と連携して直接大学の魅力を知ってもらえれば大学に人を集めやすくなるため、大学側としては高大連携を進めたいという思惑があるのです。
少子化による学生数の減少の解決方法として、高大連携は大学側にとっても大きなメリットがあります。
背景②有名私立大学の難化
また、高大連携を進めたいのは高校側も同じです。
高大連携をすればその大学への指定校推薦も必然的に行われるため、進学実績を確保したい高校側にとっても好都合です。
近年は有名私立大学を中心に大学受験の難化が進んでいるので、高校側も受験生もなるべく指定校推薦のような確実な方法で合格したいという人が増えています。
このような理由から、高大連携は急速に広まっているのです。
高大連携による受験生側のメリットは?
高大連携は大学側にとっても高校側にとってもメリットがあることを紹介してきましたが、実際体験授業を受ける高校生側・受験生側にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか?
では、高大連携にはどのようなメリットがあるのか更に詳しくご紹介していきます。
高大連携が自分にどのような影響をもたらすか知らない高校生の皆さんはぜひ参考にしてみてください。
メリット①指定校推薦で大学に行ける可能性が増える
高大連携をするとなると必然的に指定校推薦の設置・強化が行われることでしょう。
既にご紹介した通り指定校推薦枠が増えるのは高校側にとっても受験生にとっても嬉しいことですよね。
高校側は大学への進学実績を確保できますし、受験生の方もリスクを取らずに進学することができます。
高大連携の体験授業は手間に感じるかもしれませんが、指定校推薦枠の獲得につながると考えれば、前向きに取り組めるはずです。
メリット②ハイレベルな講義を先取りできる
大学の授業は高校よりもハイレベルで、内容も高校の時よりもインパクトの強いものが多いです。
その分野で行われている最先端の研究のことを知ることもできるため、自分の興味のある分野のことをより深く知ったり、講義の内容に刺激を受けて新しい教科を好きになるかもしれません。
また、このような高大連携の講義は”総合的な学習の時間”として取られている時間に行われることが多いです。
この時間に大学のハイレベルな講義を行うことができれば、非常に有効的に時間を使うことができるというメリットもあります。
メリット③学科選びの参考になる
高大連携により大学の先生の話を聞いたり大学の授業を体験することができればその学科でやっていることがより正確にわかるため、本当に行きたい学科を探す時に非常に役立ちます。
大学受験では、学科を何となく選んでしまい、入学後に「想像と違った」と後悔するケースも少なくありません。
しかし、高大連携により大学の講義を聞くことができれば学科で何をやっているかきちんと理解することもできますし、何より直接大学のことを質問する機会もあるでしょう。
進路について悩んでいる生徒さんは、ぜひ主体的に情報を取りに行きましょう。
メリット④大学の詳しい情報を得られる
また、学科選び以外の情報を得られる機会も増えるでしょう。
例えば、その大学の就職状況などは知りたい方も多いのではないでしょうか。
もちろん重要な情報は大学のパンフレットなどに載ってることが多いですが、それだけでは詳しい内容まではわかりません。
高大連携により大学の関係者の方に直接話を聞く機会が増えれば、就職状況など気になる大学の詳しい情報を得られるようになるというメリットもあります。
高大連携の大学側のメリットは?
大学側のメリットは、既にご紹介したような”学生を集められる”という点に尽きます。
現在は少子化により学生数自体が減っているため、どの大学も学生をたくさん集めたがっています。
特に私立大学では定員を超えて多くの合格者を出していたため、「定員厳格化」が実施され、学生数の偏りが是正されるようになりました。
このように、定員を無視してまで人を集めたい現状では、高校と連携して直接学生を募集した方が大学側にとってメリットになるというわけです。
その分野に興味がある学生を集められる
また、その分野に関心があり、やる気のある学生を集められるというメリットもあります。
受験生のメリットとしても解説しましたが、学科をなんとなく決めてしまうと自分が想像していたものとギャップが生じてしまう可能性もあります。
大学側としても、それぞれの学科でやっていることに興味がある意欲的な学生に来て欲しいため、高大連携で事前に説明することで本当に興味がある学生のみを集めやすくなります。
高大連携の具体例は?
高大連携は私立・公立の両方で進んでおり、その方法も様々なものがあります。
例えば教育委員会と大学で連携しているところもあれば、高校と大学が直接連携している場合もあるようです。
教育委員会を通して高大連携を行っている例
例えば大阪大学では大阪府教育委員会との連携協定を締結しており、教育委員会を通した高大連携を行っています。
この取り組みでは講師を派遣しての授業や研究室の見学等を行っており、最先端の研究に触れてハイレベルな学習ができるようなシステムを構築しています。
他には、東京都教育委員会も高大連携のための協定を結んでいるのです。
こちらは電気通信大学、東京農工大学、東京学芸大学、東京都立大学など複数の大学と協定を結んでおり、現在も協定を結ぶ大学の数は増えています。
高校と大学が直接協定を結んでいる例
私立の高校では、以下のように女子校を中心に高校と大学で直接協定を結ぶことが多くなっています。
・三輪田学園と法政大学
・森村学園と日本女子大学
・横浜女学院と東京女子大学
なぜ女子校が多いのかと言うと、女子校は学校数が多いため女子校同士で学生の取り合いが発生しやすいためです。
高校においても大学においても競争率が高いため、高大連携をしておいた方が人の募集がスムーズに行えるというわけです。
高大連携とは?まとめ
高大連携とは高校と大学が連携して教育を行うというもので、高校生のうちから大学レベルの講義を受けたりすることができることを言います。
高大連携と指定校推薦の違いとしては入学後のミスマッチ率の違いがあり、高大連携は指定校推薦とは違って事前に大学のことをよく知れるためミスマッチが生じにくいというメリットがあるでしょう。
高大連携が急速に広まっている背景には少子化があり、高大連携で優秀な学生を確実に集められることは大学のメリットになりますし、進学実績を出せる高校に取ってもメリットになります。
また、よりハイレベルな教育を受け、大学について理解を深めた上で進学できる点は受験生にとっても大きなメリットであり、関係者全体にとっても有益な取り組みとして高大連携が推進されています。
今後はより身近になるかもしれない制度なので、ぜひ受験生の皆さんも高大連携のことも気にしてみてはいかがでしょうか。