皆さんこんにちは。武田塾春日井校の森山です。
またまた間隔がずいぶん空いてしまいましたが、「理系のための英文法再入門」第5回目・6回目は「受動態」を取りあげます。
「受動態」というと、「能動態」⇔「受動態」の書き換えばかりやらされたような印象があるのではないでしょうか。
ですが、この機械的な書き換えは「受動態」の本質的な部分ではありません。
ここでも重要なのは、本ブログで何度も現れた「筆者(話者)の意識」です。
理系のための英文法再入門~第5講 受動態 (1)~
― 実は話者(筆者)の認識を表す文法的概念・表現形式の総まとめ ―
英文法の解釈に用いられる概念・用語の整理
例によって本題の受動態の話に入る前に、これまで出てきた英文法に関連する概念(concept)と用語を整理しておきます。
ついでに(ドサクサに紛れて?)新たな概念「相」を紹介します。
時制
最初は「時制(tense)」です。
時制はその事象・状態・行動がいつの話なのか(に関する話者(筆者)の認識)を表す動詞の変化です。
動詞または助動詞(法助動詞/第一助動詞)の形の変化を用いて話者(筆者)の認識を表します。
時制には現在時制と過去時制の2つがあります。
[現在時制]
・ I am hungry. (お腹がすいた[すいている])
・ Junko can speak Spanish very well. (淳子はスペイン語を上手に話すことができる)
・ Erika has just finished her homework. (恵梨香はちょうど宿題を終えたところだ)
[過去時制]
・ Graham Bell invented the telephone. (グラハム・ベルが電話を発明した)
・ Mr. Satoh could speak four foreign languages. (佐藤氏は4つの外国語を話すことができた)
・ Naoko was eating an hamburger then. (奈保子はそのときハンバーガーを食べていた)
・ Kenji had already had lunch. (賢治は既に昼食を食べていた)
厳密に言うと、「未来時制」というものは存在しません。
現在時点または過去のある時点における予定や計画、予想、または意思にすぎないからです。
・ He will be a good teacher. (彼は良い教師になるだろう-現在時制)
・ We shall overcome someday.
(僕らはいつか勝利する-現在時制 - 古いフォークソングの歌詞)
・ I was going to visit the Horyuji temple. (私は法隆寺を訪ねる予定だった-過去時制)
また、「現在完了(形)」「現在進行(形)」「過去完了(形)」「過去進行(形)」などというものも「時制」ではありません。
これらは現在または過去の「時制」と以下に述べる「相」との組み合わせと考えられるからです。
ですから、「現在完了進行(形)」などというものも考えられるのです。
「時制」にはいろいろな考え方があります。
「現在完了(形)」や「現在進行(形)」、さらに「現在完了進行(形)」などまで一つの「時制」として認める立場もあります。
本ブログでは、英文法をできるだけシンプルに理解するため、2種類の「時制」と「相」とを組み合わせる方式を採用しています。
相
「相(aspect)」という概念・用語は高校までの英文法では学習することはないと思います。「相」は動作の局面を表す(広い意味での言語学の)概念です。広い意味で動作の局面というと、始動、進行、継続、完了などの局面が考えられますが、英文法では基本的に
進行相(progressive aspect / continuous aspect) 動作・状態変化が進行している
完了相(perfect aspect) 動作・状態変化が完了した
の2つの「相」のみを考えます。
これは、動作・状態変化の進行状況(程度)を表していると考えることができます。
進行状況が、完了相では100%、進行相では 1~ 99% と考えることができます。
(更に「未然」 - 進行状況 0% を考えるとわかりやすいかもしれません)
動詞の変化形である ing 形(この場合は現在分詞)は「進行相」を持ちます(厳密には、あとで述べるように、『「進行相」を持つ場合がある』というほうが正確)。
これを一つ上で述べた「時制」と組み合わせると、
「現在時制 + 進行相(現在分詞)」
・ Akane is singing “Gurenge”. (茜さんが「紅蓮華」を歌っている) → 現在進行形です
・ Kohji looks enjoying the video game. (浩二君はビデオゲームを楽しんでいるようだ)
→ 進行相を持つ現在分詞(形容詞)を補語にとっています
「過去時制 + 進行相(現在分詞)」
・ Akane was singing “Grenge”. (茜さんが「紅蓮華」を歌っていた) → 過去進行形です
・ Kohji looked enjoying the video game. (浩二君はビデオゲームを楽しんでいるようだった)
→ 進行相を持つ現在分詞(形容詞)を補語にとっています
現在分詞と同じく動詞の変化形である過去分詞は「完了相」を持ちます
(こちらも、『「完了相」を持つ場合がある』というほうが正確)。
「時制」と組み合わせると、
「現在時制 + 完了相(過去分詞)」
・ Naoko has cleaned her room. (奈保子は部屋を掃除した) → 現在完了です
「過去時制 + 完了相(過去分詞)」
・ When we arrided at the station, my train had already left.
(私たちが駅に着いた時、列車はすでに出発していた) → 過去完了です
厳密に言うと、すべての現在分詞や過去分詞が「進行相」や「完了相」を持つわけではありません。
その動詞の変化形がどのように用いられているか、によって変わります。
interesting や exciting などは完全に形容詞化されており、「進行相」はないものと考えて良いでしょう。
同様に、過去分詞で(も)ある broken や excited なども、文脈によっては単なる形容詞であり「完了相」はないと考える方が自然な場合も多く見られます。
「現在完了(~したことがある)」は「過去時制(~した)」とよく意味が似ています。
ですが、「現在時制 + 完了相」である現在完了は「出来事が現在既に完了している」という話者(筆者)の現在時点での認識を示しており、その出来事が(話者にとって)現在につながっていることを示しています。
(本ブログの第3講で述べたことを言い換えただけです)
一方、「過去時制」では話者(筆者)に現在とのつながりの認識はありません。
更に「時制」との組み合わせでは、
「現在時制 + 完了相(過去分詞)+ 進行相(現在分詞)」も可能です。
・ Mr. Kawanishi will have been teaching English ten years later.
(川西先生は10年後も英語を教え続けていらっしゃるでしょう)
→ 未来の予想ですが「現在時制」です(will は法助動詞の現在形)。will have (have が本動詞)に完了相を持つ過去分詞 been と進行相を持つ現在分詞 teaching が組み合わされて、(未来)完了進行形を作っています。
なお、この組み合わせを「完了進行相(perfect progressive aspect / perfect continuous aspect)」として一つの独立した「相」と認める考え方もあります。
法
「法(mood/modality)」は、前回の話題で出てきた「法助動詞」の「法」です。話者(筆者)の心的態度を表す動詞の語形変化のことをいいます。つまり、「話者(筆者)が自分の述べる文の内容に対してどう思っているか(事実と思っているか、仮定のことと思っているか、など)」を示す動詞の形のことです。
「法」には、直説法、命令法、仮定法の3つがあります。
(1) 直説法(Indicative mood)
通常の文章です。事実を述べるのではなく、話者(筆者)が事実と思っている(確信している)ことを述べるのに使われます。直説法によって動詞が特別な変化をすることはありません(人称や時制、相では変わる)。文章を構成するほとんどの文が、直説法です。
・ Tanjiro loves his sister Nezuko. (炭治郎は妹の禰豆子を愛している)
・ Two and two makes five. (2足す2は5)
→ 数学的な事実ではありませんが、事実として述べた直説法の文章です。
(2) 命令法(Imperative Mood)
いわゆる命令文です。命令(依頼)したいことが既に実現しているのであれば命令(依頼)する必要はありませんから、話者(筆者)が「非現実(非事実)-実現していない」と思っており、「命令」や「勧誘」、「祈願」などを表したい場合に命令法が使用されます。
動詞は常に原形を用います。否定(禁止)の場合には、Don’tを動詞(原形)の前に置きます(Never を用いてより強い意志(命令)を表す場合もあります)。また、命令法の主語は you (または、その人をさす固有名詞(名前))です(第三者に命令することはできません)。多くの場合、この主語は省略されます。
・ Get out of here! (出て行け!)
・ Be a good boy. (いい子にしていなさい) → be 動詞が原形で使われています。
・ Don’t speak Japanese here. (ここでは日本語をしゃべってはいけません)
・ You pass me the salt. (塩をとってください)
→ 命令(依頼)を婉曲に表現するために、you をつけています。(強調の場合もある)
・ Let me explain it, please. (説明させてください)
→ 丁寧に依頼(お願い)するために、副詞 please を間投詞的に使用しています。
Please は、文頭に置かれることもよくあります。
また、ドスを聞かせて発声すると、脅しめいた意味合いになります。
・ Do shut up! (黙れ!) → 強調のため、do を動詞の前に置いています。
(3) 仮定法(Subjunctive mood)
直説法が話者(筆者)が考える事実(話者が事実と考えていること)を述べる際に用いられるのに対し、「仮定法」は話者(筆者)が表現対象を事実ではない(非現実、起こり得ない)と思っていることを表す動詞の変化形です。
上述の命令文は基本的に単文(S・V・O/Cが一組だけ)(命令文+and/or ~の形(重文)はある)です。
これに対し、「仮定法」を用いた文は、条件・仮定(この内容を事実ではないと考えている)を表す従節と、その条件・仮定のもとでの話者(筆者)の考え・思いを述べる主節とからなる複文の形をとる場合が多く(従節のない場合もたくさんあります)、主節、従節それぞれに「仮定法」としての動詞の変化形があります。
厳密には文法概念としての「法(mood/modality)」と「表現方法/形式(expressive style)」としての「仮定法」とは異なるのですが、現実にはそれらをゴッチャにして「仮定法」と呼ばれることが多いようです。
仮定法には、仮定法現在、仮定法過去、仮定法過去完了の3つがあります。
(これらの用語の中の現在、過去、過去完了は「時制(tense)」とは関係ありません。
単にその動詞の形が同じであるため、そう呼ばれているに過ぎません - 仮定法現在に至っては、現在形ですらない)
① 仮定法現在(subjunctive present)
現在・未来についての仮定・想像を表し、動詞は原形を用います。
・・・が、実際には仮定または不確実な想像を表す場合、現代英語では直説法を用いるのが普通です。仮定法現在が用いられるのは、要求・提案・依頼・希望などを表す場合で、ask、demand、request、desire、propose、suggest、require、insist、urgeなどの動詞の目的語となる that 節の中や、essential、important、necessary などの形容詞がある文でよく用いられます。
・ The teacher suggested that she study English harder.
(先生は彼女にもっと英語を勉強するように勧めた)
・ Our boss insists that he attend the meeting.
(上司は彼にその会議に出席するよう要求している)
・ It is necessary that we be prepared for the worst.
(最悪の場合に備えておく必要がある)
・ It is important that exceptions not be made.
(例外を作らないことが大切だ - not の位置に注意)
また、祈願を表す文(祈願文)でも用いられます。
・ God Save The Queen. (神よ女王を護り給え - 英国国歌)
・ May the Force be with you! (フォースが共にあらんことを! - Star Wars)
② 仮定法過去(subjunctive past)
現在の事実に反する(と話者(筆者)が考えている)ことを仮定・想像・願望するものです。仮定を表す従節の動詞は過去形を用います。be動詞は人称によらずすべてwere を用いるのが原則ですが、最近の口語では was を用いることもあります(記述式の答案では必ず were を用いること!)。その仮定の下での考え・思いを述べる主節の動詞は、
法助動詞の過去形(would、could、might など)+動詞の原形、という形をとります。
(1) 現在の事実に反する仮定・想像を表す場合
・ If I had much money, I would buy a new car.
(もしお金があれば、新しい車を買うのに)
・ If I were a cat, I could sleep all day.
(もし僕が猫だったら、一日中寝て過ごすことができるのになあ)
(2) 現在実現不可能な、または困難な願望を表す場合
‘I wish’ , ‘If only’ などのあとでよく用いられ、 (助)動詞は過去形をとります。
・ I wish the rain would stop for a moment.
(ちょっとでいいから、雨がやんでくれればなあ)
・ If only he would be a little bit more gentle.
(彼がもうちょっと穏やかだったらいいのになあ)
(3) 将来に対する期待・要望を表す場合
‘It is time’のあとで「もう~してもよい時だ」(実際にはしていない)の意味を表します。
・ It’s high time the children went to bed. (子供たちはもうとっくに寝る時間だ)
→ それでも子供たちが寝ずに遊んでいると、パパはぶち切れて
・ YOU, go to bed immediately! と、命令法を使うことになります。
③ 仮定法過去完了(subjunctive past perfect)
過去の事実に反することを仮定・想像・願望するもので、従節(仮定節)の動詞は過去完了形を用い、主節の動詞は、法助動詞の過去形(would、could、might など)+ have +動詞の過去分詞、という形をとります。
(1) 過去の事実に反する仮定・想像を表す場合
・ If I had left my house a little earlier, I could have been in time the airplane.
(もう少し早く家を出ていれば、飛行機に間に合ったのに)
(2) 過去において実現されなかった願望を表す場合
仮定法過去の場合と同様に、‘I wish’ , ‘If only’ などを用いて、過去において実現されなかった願望を表します。
・ If only I had been more careful then.
(あのときもっと慎重だったらなあ)
「仮定法」というと、if に導かれる条件節の形ばかりに目が行きがちですが、「仮定法」の本質は、事象が起きていない(起こりそうもない)と話者(筆者)が考えているという前提で、話者(筆者)が考えている(思っている)ことを述べる主節の方にあります。
従って、if 節のない場合や、条件を表す句すら存在しないこともあり得ます。
「彼がいれば、パーティーはもっと楽しかっただろう」という文を考えると、
・ If he had attended, the party would have been more happy.
・ With his attendance, the party would have been more happy.
・ His attendance would have made the party more happy.
などの書き換えが考えられます(いずれも「仮定法過去完了」の文です)。
また、直説法を使うと、「現実にこうなんだ」という断定的なニュアンスが生じます。
これに対し仮定法を使うことで「私はこう考えているのですが・・・」という、あくまでも話者の主観的な考えや思いを述べているというニュアンスになります。
このため、婉曲な表現や丁寧な表現には仮定法(や仮定法に由来する表現)が多く見られます。
会話で用いられる定型的・慣用的な表現も多数存在します。
これらの表現については、文法参考書等で補っておいてください。
態
「態(Voice)」とは、「主題が動作・行為の原因(動作主)となるか、その動作・行為の対象となるかを客観的な観点から表す」動詞の変化形態です。
わかりやすく言えば、「主語から見て『~する』のか『~される』のか」を示すものです。
英語の「態」には、能動態、受動態の2種類があります。
能動態(Active Voice) : 主語から見て「~する」という意味を表す動詞の形
受動態(Passive Voice): 主語から見て「~される」という意味を表す動詞の形
文構造の面から言えば、受動態とは「能動態の目的語(O)を主語(S)にして言い換えた形」です。
・ Tanjiro loves Nezuko. (炭治郎は禰豆子を愛している) 能動態
→ Nezuko is loved by Tanjiro. (禰豆子は炭治郎に愛されている) 受動態
従って、「目的語(O)がない文」を受動態を使って言い換えることはできません。
受動態の文が第何文型か、は普通考えません。
しいて言えば(本ブログの考え方では、またこの例文では)、
S(Nezuko) V(is) C(loved by Tanjiro) で第2文型です。
「能動態」「受動態」という用語は、上記の「~するのか、~されるのか」の別を示すと同時に、
「能動態の文」「受動態の文」という意味で「文の種類」を表すことも多いので、注意が必要です。
以上の4つの文法概念を一覧表にしてみます。
No | 項 目 | 説 明 |
1 | 時 制 | その事象・状態・行動がいつの話なのかに関する話者(筆者)の認識を表す動詞の変化 |
2 | 相 | 動作の局面を表す概念 |
3 | 法 | 話者(筆者)の心的態度を表す動詞の語形変化 |
4 | 態 | 「主題が動作・行為の原因(動作主)となるか、その動作・行為の対象となるかを客観的な観点から表す」動詞の変化形態 |
この4項目の中で「時制」「法」「相」が話者(筆者)の認識・心的態度を表すのに対し、「態」だけは「客観的」となっていることに注意しましょう。(とは言っても、絶対的なものではありませんが)
このため、話者の認識に関わる先の3つの概念をまとめてTMA範疇(T(Tense)M(Modality)A(Aspect) Category)と呼ぶことがあります。
また、この4項目の中で「時制」「法」「態」の説明が「~動詞の(語形)変化」となっており、「相」だけは「~概念」となっています。
「動詞の語形変化」はその言葉通り動詞の形を見れば解ります。
それでは、「相」はどこに表れるのでしょうか。
その答えは「分詞(participle)」です。
「分詞」とは、「動詞の変化形で形容詞として働き、形容詞の文法規則に従うもの」でした。
分詞には「現在分詞(present participle)」と「過去分詞(past participle)」があります。
そして、それぞれが「相」を持ちます。また、同時に「態」の情報も持っています。これらをまとめると以下のようになります。
No | 種 別 | 相 | 態 |
1 | 現在分詞 | 進行相 | 能動(態) |
2 | 過去分詞 | 完了相 | 受動(態) |
なお、「態」に関する情報は「分詞」だけが持っているわけではありません。
直説法の文のうち「受動態」の形をとらない通常の動詞の形はみな「能動(態)」です。
第5回は以上です。今回も長くなってしまいましたが、最後までお付き合い頂き、まことに有り難うございました。
本当は「受動態」に関するもっと実戦的なお話まで含めるつもりでしたが、長くなりすぎましたのでその話は次回に繰り越すことにします。
では次回のブログでまたお会いしましょう。
【参考文献】
- 澤井康裕 著 英文法再入門 中公新書
- 石黒昭博 監修 総合英語 Forest (フォレスト) 桐原書店
(仮定法や受動態の種類・使い方・注意点などがよくまとまっています。)
今回の話題でも、多くのウェブサイトを参考にしました。個別の名前を挙げることはやめておきますが、興味のある方は適当なキーワード(法、時制、相、など)を入れて探して、ご自身の目的に合うものを見つけてください。
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