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理系のための英文法再入門~第3講現在完了形~

皆さんこんにちは。武田塾春日井校の森山です。「理系のための英文法再入門」第3回目は「現在完了」を取りあげます。実は現在の日本語には「現在完了」にぴったり当てはまる簡便な表現が存在しません。そのことが「現在完了」の理解を難しくしているようです。

 

過去と完了の区別を失った現代日本語

まず、以下の2つの英文をご覧ください。

(1) I lost my fountainpen.

(2) I have lost my fountainpen.

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(1) は過去形、(2)は現在完了形です。過去形では過去のある時点で万年筆をなくしたことを言っていますが、現在万年筆を持っているか否かは不明です(新しいものを手に入れたかもしれない)。一方で現在完了形を用いると、ある時点で万年筆をなくした状態が現在まで続いていることを表します(つまり、その結果今は万年筆を持っていない)。ところが、日本語訳はいずれも「万年筆をなくした」となります。つまり、過去形と現在完了形の違いを簡単に表現する手段が現代日本語にはないのです。

 

次に、以下の文章をご覧ください。いずれの文も「伊勢物語」「東下り」の段からです。

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(3)昔、男ありけり。その男、身を要なきものに思ひなして、「京にはあらじ、東の方に住むべき国求めに」とて行きけり

昔、(ある)男がいた。その男は、我が身を役に立たないものと思い込んで、「京にはおるまい、
東国の方に住むにふさわしい国を探しに(行こう)」と思って出かけ

(4)三河の国、八橋といふ所にいたり

三河の国の八橋という所に着い

(3) の「行きけり」は過去、(4) の「いたり」は結果(完了)を表しています。そう、昔の日本語(古文)では過去と完了の別を表すことができたのです。これは昔の日本語が持っていた豊富な助動詞の働きによります。古文には、

[過去] : (体験過去) けり(過去伝聞、過去詠嘆)

[完了] : (完了、強意) (完了、強意) たり(完了、存続) (完了、存続)

と、完了(結果)や継続(存続)を表す助動詞がそろっていました。

しかし現代日本語では「)」という助動詞一つだけで、過去・完了・存続(継続)(・確認)の意味を表しています。これは、英文を和訳するときには楽ちんといえば楽ちんなのですが、元の英文の意味を正確に伝えようとすると、言葉を補う必要があるということでもあります。

 

さらに、和文を英訳しようとする際には、文脈から筆者(話者)の思いやその状況を考えて、過去形にするのか現在完了形にするのかを決定しなければなりません。次のような会話文を英訳する場合を考えてみましょう。

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 A : 「最近、おまえなんかヘンだぞ。何かあったのか?」

 B : 「恋しちゃったん

  このBの答えを英訳するとします。これが今現在の会話であるとすると、Bは誰かに一目惚れ(?)して、その結果今まさにその彼女のことしか考えられない状態にあります。

従って英訳は   I’ve fallen in love with her.   でなければなりません。

しかし、これが何年か前のBの状態を話題にしているのであれば、

 A : 「あの頃、おまえなんかヘンだったぞ。何かあったのか?」

 B : 「恋しちゃったん

今話題になっているのはその当時のBの状態で、現在どうかは無関係ですので、  I fell in love with her. となります。

 

現在完了形の意味・用法の種類

中学校そして高等学校で現在完了形を学習するとき、以下の4つの意味があると習います。

         「結果」 「継続」 「完了」 「経験」 

  (順番は異なる場合があります)

確かに現在完了形にはこの4つの意味があるのですが、単純に並列に並べてよいものではありませんし、どのような場合にそれぞれの意味を持つのか、また、過去形とどう違うのかについては十分に理解されていないように思います。

 

出来事動詞と状態動詞

動詞は、それが表す意味から「出来事動詞(動作動詞)」と「状態動詞」の2つに分けることができます。

   出来事動詞(動作を表すもの):

              walk(歩く)、throw(投げる)、など

        状態の変化を表すもの:     

     melt(溶ける)、die(死ぬ)、など

   状態動詞:

     be(~である)、seem(思われる)、love(愛している)、など

現在完了は、これらのどちらが用いられるかによって、意味が異なります。

「出来事動詞」は一般的には「動作動詞」と呼ばれることの方が多いようです。

ですが、これでは「状態の変化」の扱いが曖昧になりますので、本ブログでは「出来事動詞」を使用しています。)

 

出来事動詞が用いられた現在完了

出来事動詞を用いた現在完了形を同じ動詞の過去形と比べてみましょう。

    (1) He cleaned the room.              (彼はその部屋を掃除した)

まずは過去形です。この状態を図で示すと以下のようになります。

2021-08-25

(1)の文は、「過去のある時点で、部屋の掃除をするという出来事があった」ということ(だけ)を示しています。現在の状況は分かりません。部屋は掃除直後のようにきれいなままかもしれませんし、そのあと汚れたのかもしれません。

次に現在完了形の場合を見てみましょう。

    (2) He has cleaned the room.       (彼はその部屋を掃除した)

has cleaned と現在完了形になっていますが、日本語訳は(1)と同じ「彼はその部屋を掃除した」です。
ですが、この英文(2)が持つ意味を図で示すと以下のようになります。

2021-08-25 (1)

この場合は、単に過去の出来事を述べているのではありません。過去の出来事の結果、現在、何らかの事態(☆)がある、ということを述べています。(過去の出来事の結果を、今、持っている(have)、と考えることもできます。) この例の場合は、過去の出来事が「部屋を掃除した」ということなので、その結果として今生じている事態は「今部屋はきれいだ」と考えることが出来ます。

このように、出来事動詞を用いた現在完了の文の意味は、「過去の出来事 + その結果の現在の状況」であり、過去の出来事の結果が現在の状況に影響を及ぼしている、ということです。このことから、出来事動詞を用いた現在完了の意味は「結果」という言葉で表すことができます。

 

状態動詞が用いられた現在完了

次に、状態動詞が用いられた現在完了について考えます。次の例文をご覧ください。

(1) I have liked dinosaurs since I was a child.  

 (小さいときから(ずっと)僕は恐竜が好きだ。)

(2) She has been sick in bed for a week.         

  (彼女は病気で1週間寝込んでいる。)

 

(3) She was sick in bed (last Monday).          

     (彼女は病気で寝込んでいた。)

(1) の like 、(2) の be はともに状態動詞です。(1) では、「好きだ(愛好している)」という状態を小さいときから持っている(have)、すなわち「小さいときから継続して愛好している」ということになります。(2) では、「病気だ」という状態を1週間持っている(has)ということは、「1週間ずっと病気で寝込んでいる」という意味で、これもまた継続の意味になります。これらと比べて (3) の過去形の文は、「先週の月曜日には病気で寝込んでいた」という過去の事実を述べているだけで、今の状態はわかりませんし、時間の幅はありません。

このように、状態動詞が用いられた現在完了の意味は「継続」なのです。(1) の例をとって、これを図にしてみると下記のようになります。

2021-08-25 (2)

また、「継続」用法の現在完了では、開始時期や期間の長さを表す副詞(句・節)(since I was a child, for a week など)が添えられることが普通です。

継続の意味の現在完了は、多くの場合「~だ」「~である」「~です」「~(し)ている」と訳します。また、その期間が長いと感じられる場合には、「ずっと」などを補うと感じが出ます。

 

オプションとしての「完了」と「経験」

上記のように、現在完了の意味は、出来事動詞を用いた場合は「結果」、状態動詞を用いた場合は
「継続」です。それでは、先に紹介した4つの意味のうち「完了」と「経験」はどう考えればよいのでしょうか。

実はこの2つは、主に「結果」の意味の場合(つまり、出来事動詞を用いた現在完了)のオプションとして存在しているものに過ぎません。

 

出来事動詞を用いた現在完了の文において、結果として生じている事態は、
「完了」「経験」と表現できるものであることが多い。

具体例を見てみましょう。

I have seen “Demon Slayer” three times.         

       (「鬼滅の刃」は3回見た(ことがある)。)

出来事動詞を用いた現在完了の文であるこの例文には、「見たという出来事 + その結果生じている現在の事態」という2つの内容が含まれ、その「現在の事態」は「3回見た結果、3回の視聴経験を持っている」であると考えられます。その事態は「経験」という言葉でとらえられます。

なお、経験の意味がある場合は、「ことがある」という言葉を添えて訳すと、経験を感じさせる和訳になります(「3回見た」のままでも問題ありません)。

ほかの例を挙げましょう。

Have you ever eaten caviar?  

                    (キャビアを食べたことがありますか?)

I have never been to Hokkaido.  

               (北海道には行ったことがありません。)

「これまでに」を表す ever 、「一度も~ない」を表す never は、経験を表す現在完了で頻繁に使用される副詞です。なお、been は「行く」という意味の出来事動詞として使われています。

 

次に「完了」の例を考えましょう。

    I have repaired the TV set.   

                     (テレビを修理した。)

この文で結果として生じている現在の事態は、「テレビは直っている」ということです。そしてこれは、「テレビの修理が完了している」と考えることもできます。

ほかの例文を考えましょう。

    Q1 : Have you finished your homework yet?  

          (宿題は(もう)終わった?)

    Q2 : Have you already finished your homework?                    (えっ、宿題はもう終わったの?)

    A1 : Yes, I’ve already finished my homework.    

      (宿題はもう終わりました。)

    A2 : Yes, I’ve just finished my homework.      

          (ちょうど(たった今)終わりました。)

    A3 : No, I haven’t finished my homework yet.    

      (宿題はまだ終わっていません。)

完了を表す現在完了で頻繁に使われる副詞には、yet、already、just があります。yet は、通常末尾に置かれて、疑問文では、「もう~(し)た?」、否定文では「まだ~して(終わって)いない」を表します。already は、通常(肯定文の) have の後ろに置かれて、「既に(もう)」を表しますが、(例外的に)疑問文で使用されると、「えっ、もう終わったの?」という驚きのニュアンスを持つ表現となります。

 

以上のように、現在完了の文は、「出来事動詞と状態動詞」という分類と関連させて、「結果」と「継続」としてとらえるのが最も合理的であり、その一部の意味のオプション(拡張)として「完了」と「経験」の意味を持つと考えるのが合理的です。まとめると以下のようになります。

  出来事動詞を用いた現在完了 → 「結果」の意味

  状態動詞を用いた現在完了    → 「継続」の意味

   *特に「結果」の場合に、「完了」「経験」のニュアンスが

      存在する場合がある。

 

同じ動詞が持つ「出来事」と「状態」の側面

現在完了の持つ意味は「出来事動詞」と「状態動詞」の別を意識すれば、上記のように整理できるのですが、同一の動詞であるにもかかわらず、「出来事動詞」と「状態動詞」の両方の性質を持つものがあることには注意が必要です。

ここでは、use という動詞について考えてみましょう。これは「使う」という意味の動詞です。

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    (1) I used this mechanical pencil yesterday. 

     (きのう、このシャープペンシルを使った。)

この文のused は明らかに1回限りの出来事であり、used は出来事動詞です。従って、この意味のused が現在完了で用いられた場合、「結果」の意味となります。

    (2) I have used this mechanical pencil twice.

     (このシャープペンシルを2回使ったことがある。)

この場合、「2回の使用経験がある」という「経験」の意味になっています。

ところが use は状態動詞としての側面も持っています。

少し話はずれますが、私は某メーカーのキャップ付きの 0.5mm シャープペンシルを 1980 年頃からずっと愛用しています(今使っているものが何代目になるのかは忘れました)。ですから、「どんな筆記具を使っていますか」と聞かれたら、私は I usually use this mechanical pencil. (私はいつもこのシャープペンシルを使っています)と答えることになります。この場合、use は出来事動詞ではなく(いつも使っているという状態を表す)状態動詞だと考えられます。そして、この意味の use を使った現在完了を用いた場合、文は「継続」の意味を持つことになります。

    (3) I have used this mechanical pencil since1980.

(私はこのシャープペンシルを1980年からずっと使っている。)

since1980 があることから、「継続」の意味だということは明らかです。

 

文中に現れたある動詞が、「出来事動詞(動作動詞)なのか、状態動詞なのか」を判別するのは結構大変です。残念ながら、簡便な方法はありません。結局のところ、現在完了の意味が「結果」なのか「継続」なのかを判別するには、用いられている動詞の意味と文脈を常に考えながら、毎回、丁寧に見極めるしかありません。ただ、「一つの動詞が結果の意味で使われたり継続の意味で使われたりすることがある」ということを知っているだけで、文を解釈する上で大きな武器にはなります。

 

現在完了進行形

出来事動詞(動作動詞)の現在形が、「今している」ことではなく、「(日常的に)繰り返し行われる」動作を表すのに対し、現在進行形は、「今まさに行っている」ことを表します。

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    (1) Sohta plays tennis every Sunday.  

         (聡太は毎週日曜日にテニスをする。)

    (2) Sohta is playing tennis with Rie now.  

     (聡太は今、理恵とテニスをしている。)

では、この現在進行形が、現在完了になると何を表すのでしょうか。

現在進行形に使われる動詞は、(通常)出来事動詞です。ということは、現在完了にすると「結果」または「完了」の意味になるのでしょうか。

    (3) Sohta and Rie have been playing tennis for two hours.

                (聡太と理恵は、(もう)2時間テニスをしている。)

この例では、for two hours という副詞句とともに現在完了進行形が用いられています。出来事動詞を用いた現在完了進行形は「(今まで)ずっと し続けている」という「動作の継続」を表します

では、次の例はどうでしょうか。

    (4) Fujii Sohta has been studying shogi since he was a child.

             (藤井聡太は、子供の頃からずっと将棋を研究してきた。)

この場合、study という動詞が、「研究(勉強)する」という動作を表すと同時に、「研究(勉強)している」という「状態動詞」としての意味も持つため、since he was a child という期間の始まりを表す副詞節を伴って、完全に「継続」の意味を表しています(状態動詞の現在完了は「継続」を表すのですから、当然といえば当然です)。この場合、Fujii Sohta has studied shogi since he was a child. という「継続」を表す現在完了形の文と、ほとんど意味の違いはありません。

 

第3回は以上です。今回も長くなってしまいましたが、最後までお付き合い頂き、まことに有り難うございました。繰り返しになりますが、文法書や辞書を使っての確認は必ず行って下さい。特に今回は、各種の動詞の意味・用法の分類や、その動詞の現在完了形とともに使われる副詞についての解説が全く不十分です。また、過去完了、未来完了についても全く触れていません。ぜひ、文法書で補ってください。

参考書の各単元の例文を音読し、覚えることは非常によい勉強になります。特に、音読しながらその文の意味まで思い描くことができるようになれば完璧です。

では次回のブログでまたお会いしましょう。

 

【参考文献】

澤井康裕 著 英文法再入門                                                              中公新書              (今回はこの本の第4講の内容を中心に記事を作りました。)

石黒昭博 監修 総合英語 Forest (フォレスト)                                    桐原書店       (現在進行形と現在完了進行形の部分は、この本を参考にしました。)

 

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