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「決算!浪人生活」:浪人のコストを生涯年収で損得計算してみた

先日、「決算!忠臣蔵」という映画を見てきました。ナイナイの岡村さんが、地味ながらいい味を出していて予想以上に楽しかったです。
パソコンのなかった時代の討ち入りは、予算管理の面からも大変だったのですね。現代人からみると、その大変さが笑いを誘うので面白い映画に仕上がっていました。

そこで、似たようなタイトルでブログを作ってみたのですが、今はまだ12月で大学受験に関しては一般試験の入試すら始まっていないので「浪人なんて縁起でもない!」とのお叱りを受けてしまいそうで怖いです。

でも、3月に入試の結果が出そろった頃は「浪人なんて人生の負け組だ!」といった感情的な煽りが横行しそうなので、今のうちに統計データに基づいた冷静な分析をしてみたいと思います。

結論を先に言うと、浪人生活を送ったもし1年後に志望校に合格できるならば、金銭面でのメリットは十分にあります。逆に、1年後も全ての大学に不合格となり、更に多浪を繰り返した末ににニート(夏目漱石のいう「高等遊民」ですね)になってしまうと、金銭面ではデメリットしかありません。

 

浪人生(既卒生)の割合の推移

予備校での噂によると「最近の受験生は現役志向が高いから浪人生が減っている」らしいんだけど、本当のところはどうでしょうか?文部科学省「学校基本統計」によると、大学入学者に占める現役生の割合の推移は以下の通りとなっています。

大学入学者に占める現役生の割合の推移
現役比率 = (現役生の人数) ÷ (大学入学者の人数)  

 

平成元年

・・・ 平成7年 ・・・

令和元年

192,008÷338,064

=57%

・・・

216,488÷370,091

=57%

・・・

251,463÷340,342

=74%

110,299÷138,722

=80%

・・・

155,547÷198,485

=78%

・・・

238,520÷290,923

=82%

合計

302,307÷476,786

=63%

・・・

372,035÷568,576

=65%

・・・

489,983÷631,265

=78%

(出所: 文部科学省「学校基本統計」)

各年により若干のばらつきがあるのですが、男女を合わせた合計数では昭和40年代~平成元年~平成7年頃まで約65%が現役生で安定的に推移していました。それが、平成7年頃を境に徐々に現役生が増えていって現在では約80%が現役生で占められるようになっています。

 

男女別でみてみると、女子は昔から約80%程度で安定的に推移(それでも近年は若干増加傾向あります)しているのですが、男子の現役志向が顕著です。昔は50~60%程度で推移していたのですが、平成7年以降に徐々に現役生が増えて現在では約80%に迫る勢いです。

 

平成7年(西暦1995年)というと第2次ベビーブーマーの世代大学受験を終えた頃ですね。なぜ現役志向が高まったか?という質的な分析について今回は検討しません。単に、統計データに示された学生数という量的な事実に着目することで冷静な分析が可能になると思います。

浪人生活(予備校)の損得計算

浪人生活のコスト

浪人生活がスタートすると様々な費用が必要となります。
どんな予備校に通うのか?自宅から通うのか?それとも、東京でアパート暮らしを始めるのか?等によって、その費用は大きく異なってきます。

本来なら、どこかの大手予備校が浪人生の生活費について統計データを発表してくれれば有難いのですが、残念ながらそんなデータは公表されていません。
そこで、東京私大教連「私立大学新入生の家計負担調査 2018年度(HP掲載:2019年4月3日)」のデータを使いたいと思います。まあ、大手予備校の一年間の学費は、東京の私立大学とほぼ同水準であろうと考えても大勢に影響はないでしょう。

東京私大教連のデータによると、初年度(1年間)に必要な費用(自宅外通学生)は生活費等の仕送りを含めて合計2,962,918円とのことです。ここでは、計算を簡単にするために浪人のコストを総額300万円と想定することにしましょう。

生涯収入の比較!高卒 vs 大卒

平均的な大卒高卒生涯収入を比較してみると、以下の通りとなります。

学歴別の生涯収入

  男性 女性
高校卒(a) 2億1千万円 1億5千万円
大学卒(b) 2億7千万円 2億2千万円
差額(=b-a) 6千万円 7千万円

(出所: 労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計」)

ここで「なんで、女性の方が男性より生涯収入が低いのですか!」とツッコミたくなる気持ちは置いておいて、これは統計データなので現実をありのままに受け入れることとしましょう。すると、男女ともに、高卒と大卒の平均的な生涯収入の差額は6~7千万円であることが分かります。

浪人生活(予備校)の投資判断

以上のデータに基づいて、ファイナンス理論の手法を使って簡単な投資判断してみましょう。

まず、初期投資として、浪人生活(自宅外通学生)の費用として年間300万円(アパート代+仕送り込み)があります。

次に、浪人して頑張った結果として大学に合格すれば生涯収入が6~7千万円増加するとのデータがあります。

従って、初期投資300万円でそのリターンは6~7千万円となることから、この投資(つまり浪人生活)は実施すべきとの結論になります。(厳密には”現在価値の計算”が必要ですが、最近のゼロ金利を勘案すれば問題ないでしょう)

以上のように、ファイナンス理論では「初期投資」と「リターン」を比較することによってのみ判断します。
ここで、「もし、現役で合格していれば予備校の費用は不要だったのに・・・」といった要素は一切無視していることに着目してください。つまり、現時点で実現不可能な選択(いまさら「現役で合格していれば・・・」といっても仕方ありません)は検討の対象に含めないということです。

こう考えると、ファイナンス理論にも親しみを感じてきますよね(笑)
もし、興味がわいたら大学で深く勉強してみてください。

 

大学別(東大・早稲田・慶応)の生涯年収について

ここで更に話を進めて、大学別生涯収入も比較出来たら興味深いですよね。

例えば、本当に偏差値の高い大学に行けば生涯収入もアップするのか統計データで裏付けられたおもしろいですよね。

しかし、残念ながらそのような統計データは存在しませんでした。

 

その代わりといってはなんですが、非常にざっくりとした推測がインターネットに掲載されていたので、以下の通りご紹介します。
一言、私見を述べさせて頂くとすると、この推測方法は非常に単純化した簡単なものなので信頼性は乏しいと思います。単なる"話のタネ"程度に聞き流してください。

東大・早・慶卒業生の生涯年収の比較(出所: AFG)

上のグラフは、生涯賃金ということなので一生に稼ぐお金の総額についての話ですが、下のグラフ年齢毎に年収(1年間の賃金)を比較したグラフです。

東大・早・慶卒業生の年収比較(出所: AFG)

もし、この推測値が本当ならば、例えば早稲田大学を合格したとしても、更に1年間(場合によっては2年間もOK)浪人して東大に行った方金銭的メリット(生涯年収)が大きいこととなります。

但し、このように高収入を稼ぎ出すエリート・サラリーマンの多くは、伝統的な年功序列の大企業に勤務しているでしょうから生涯年収の計算に際して調整が必要となってきます。それは定年の問題です。

尚、大手企業の就職試験では、浪人しても2浪までなら不利にならないといわれています。このこと自体は私自身も実体験で経験しているので本当のことだといえるでしょう。但し、1年間の浪人生活を送るということは、定年(60歳)までのサラリーマン生活は1年間短くなることを忘れてはなりません。

 

この短くなった1年間は、最も年収の高い59~60歳の1年分の年収が減ると考えるのが妥当ですから、浪人生活には隠れたコストが存在することになります。(逆に、起業開業するれば定年がないから問題ありません)

更に、いま受験生の皆さんがサラリーマンになる頃には少なくとも65歳に定年延長(年金支給が後ろ倒しになれば、更に定年延長となるかも)されているだろうから関係ないかもしれません。そもそも、大企業といえども年功序列を維持できない時代が来るかもしれないので、まずは浪人生活では受験勉強に専念して来年こそ合格できるように頑張ってください。

もし、浪人生活での勉強方法についてアドバイスが必要でしたら、武田塾用賀校無料受験相談にお申し込みください。

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