受験において日本語の読み書きは重要だよという話(読み編)
お久しぶりです!京都の予備校と言えば武田塾京都校!講師のS.Yです!
前回のブログ投稿から実に139日!
ブログの冒頭に「お久しぶりです」という挨拶をするのが恒例となってきました。
今年度の塾生のみなさんからすれば、僕のブログよりも他の複数の講師が書いているブログの方が馴染みがあるかもしれません。ブログを書く講師が増えたことによって内容やコンセプトにいろいろなバリエーションがあって良いですね。なかなか粒ぞろいの記事たちなので、まだ読んでいないものなどあれば、是非お読みください。
さて、今回のテーマは、「日本語」です。
英語とか、国語の間違いとちゃうの?という方もおられるかもしれませんが、「日本語」です。
「日本語」が受験において重要であるということ
日本の大学を受験するにあたっては、ほとんどの場合、設問や選択肢は日本語で書かれていますし、設問への解答も日本語ですることが求められます。英語の試験にしても、たしかに、京都府立医科大学のように設問も英語という大学もありますし、英作文が求められることもありますが、大半は日本語で解答することが求められ、設問も日本語であることが多いです。
このことは、どの教科の試験も、受験生が日本語の運用能力を有していることを前提としているということを意味します。
武田塾で講師をしていても、「読む」ことに関していえば、①講義系参考書の記述の読み違い、②演習系参考書の解説の読み違い、③設問文・選択肢の読み違いなどを、ケアレスなミスとは言えないレベルと頻度でやってしまう生徒さんは後を絶ちませんし、④語彙力が不足していて記述の意味が理解できない・理解できない語彙を読み飛ばしていて適当に文意を把握しているという生徒さんもよくいます。「書き」に関しても、論述形式での解答が求められる場面で、平易な日本語の運用であれば犯さないだろう簡単な文法の誤りを濫発し、奇妙奇天烈な日本語風味の文字列をお目にかかることは少なくありません。
これでは、(1)日々の自学自習や特訓で各科目の知識を丁寧に積み上げたとしても、肝心のアウトプットの場面でそれらを発揮できないという何とも残念なことになってしまいますし、(2)そもそも①②のようなミスを連発してしまうような場合には、特訓でたまたま聞かれた事項についてしか適切なインプットがなされないというような事態に陥ってしまいます。
既に上がっている関連ブログ
もっとも、「読み」にまつわる問題については、僕自身過去にいくつかブログ記事を書いています。
(1)については、現代文をテーマにしたものではありますが、以下の「現代文の解き方講座シリーズ」が、本文・設問文・選択肢をしっかり読む大切さを説くものになっていますし、一般的・抽象的に書いている部分が多いので、他の科目にも応用が利くと思います。
また、選択肢をとことん読むという意味では、日本史が題材ではありますが、
というようなものもあります。知識で2択まで絞り込んだはいいものの、1つに絞りきれない問題を、選択肢をじっくり読んで「考える」ことで、2択を当てまくるという痛快な(?)内容になっています。
(2)について、参考書の文章が読めていないといわれても、自分はさすがに大丈夫と思っている人もいるかもしれませんが、そのような人に対しては、以下のブログを読むことをおすすめします。
Can You Read Japanese? 日本語が読めれば合格できる
ごく簡単な日本語テストを中高生に実施したところ、けっこう読めていないことがわかった。しかも、統計的に優位に読めているといえる層は東大生・京大生ぐらいという衝撃の結果ですね。教科書の記述が読めていることを前提として、どのような教育をするべきか、ということよりも、教科書が読める・読めないということの方が学力の差には大きな影響を与えているということは、研究によって明らかにされているのですよね。
研究のメインの所でないにもかかわらず、「東大生・京大生ぐらい」という点に言及しているのは、多くの塾生・塾生以外の読者の受験生(いたらうれしい)に、自分事として理解して欲しいためのお節介です(ほんとうはどうでもいいし、みんな読める世界線の方がきっと楽しい)。
「やっぱり自分は、読めていないのかも。」と思った皆さんに朗報ですが、この研究でも、読解力は後天的に向上させることができるということが示されています。
そこで、今回は、読解力を向上させるために、どのようなことを気を付けておくのが良いか、どのようなことに気を配って日本語を読むとよいかについて、少し触れたいと思います。「書き」については、次回「書き編」で書ければと思っています。
読めるようになるために必要なこと・気を付けるべきポイント
先に述べておくと、読解力向上のために必要な要素はたくさんあり、限定列挙することはおよそできません。このことを前提としたうえで、日ごろ受験生を見ていて感じること、自分が文章を読んでいるときに癖づいていることについていくつか挙げてみようと思います。
・読もうとする意思
まず、「目の前の文章を読もうとする意思」が大切です。今このブログを読んでくださっている方々に対しては不必要な指摘かもしれませんが(欠席の人は手を挙げて的な意味で)、漢字ばかりであったり、カタカナばかりであったり、抽象語や専門用語が並んでいるような文章を見るだけで嫌悪感を抱き、読めないと思い込む。読めないと思い込むからこそ、流し読みになり、適当に言葉を飛ばしながら「目で文字列を追ったこと」をもって読んだことにする、という方は程度こそあれたくさんいます。
ここまで極端な例ではなくとも、端(はな)から難しい、とっつきにくい文章と決めてかかって、2回読めば理解できるはずの文章を1回サラッと流して終わらせてしまって、解答や講師の指摘を受けて、「なんだそんな簡単なことだったのか」と気付くという経験をした方はたくさんいると思います。読めると思って文章に対峙するということはかなり重要だと思います。
もちろん、文章を読んで理解するというのは、読み手の気持ちの問題に尽きるというわけにはいかず、読解をする上での基礎的な知識・技術・経験が必要です。
・ある程度の語彙力
まず、必要な知識として、「語彙力」が挙げられます。教科書の記述や現代文の本文(最近の私立大学の現代文では新書からの出題も多いです。その程度の読解で十分差がついてしまうということもあるのでしょう。)などの文章中に使われている語彙で分からないものが1つや2つという程度であれば、推測でなんとかなったり、辞書を引いて適切な意味を選び取って読み進めたりできます。しかし、分からない語彙が4つ、5つと増えていくにしたがって、推測では太刀打ちできなくなり、また、辞書を引くことも億劫(おっくう)になります。もうすこし増えて、10個を超えてくるような場合には、辞書を引いてもどの意味か見極められなかったり、そもそも辞書の説明で使われている言葉の意味も理解できないという「詰み」状態に陥るかもしれません。こうなると負のスパイラルから抜け出せませんね(これを書きながらも、ちゃんと理解してもらえているのか、少し不安になりますが。わざわざ難解な言い回しをするということはありませんが、分かりやすい言葉への言い換えを逐一やっているというわけでもなく、1,2回辞書を引いてもらうことになるかもしれないという前提で文章を書いているので、分からない言葉があれば辞書を引いてください。電子辞書であれば漢字が読めなくても漢字を書くことで調べられます。)。
かくいう僕は、語彙で困ることはほとんどありません。小さいころから本をたくさん読んでいたのかと言われることもありますが、大学生になるまでは、夏休みの課題で出されるもの(いわゆる課題図書)以外で本を読むことはほとんどなかったので、読書量は必要条件ではないような気がします(そもそもわからない語彙を読み飛ばしていたら何冊読んでも一緒ですよね)。
僕が周囲の人より明らかにやっていたと言えるのは、辞書を引くことです。小学生のころから、常に辞書を持ち歩いていて、分からない言葉が出てきたら数秒と空けず辞書を引いていました。理科室にも持って行っていたのを覚えています。最初は、学研の子ども用の辞典を使っていたのですが、調べたい語が10連続くらいで見つからなかったことに怒り心頭し(笑)、明鏡の国語辞典に乗り換え、それも意外と載っていないことに気が付くと、電子辞書をねだって買ってもらいました(両親からと祖父母からの両方の誕生日プレゼントを消費された記憶がある)。学校に持っていけなければ意味がないので、先生に直談判し、特別にその学年(かうちのクラスだけか分かりませんが)だけ、電子辞書を持ってくることを許可してもらったという経験があります。そのときは、ニュースで使われる言葉や、バラエティ番組でお笑い芸人が使っている言葉でも調べていました。いまでは、専門用語を除いて、辞書を引くことはかなり減りました。分からない言葉が少ないと、辞書を引くことは煩わしくないですし、むしろ引かないと落ち着きません(もっともこれは分からない言葉がたくさんあった小学生のころからかもしれない。)。
語彙力は一朝一夕(※)には身につきません。分からない言葉を飛ばして読んでいる・流して雰囲気で分かったことにしているうちは一生身につかないでしょう。1年続けるだけでも生まれ変わるくらいの成長を実感できると思いますよ。
※小学校の教科書にも載っていそうな四字熟語ですが、会話で使用していると、「一鳥一石」と変換して「一石二鳥」のパチモンみたいな言葉を作り上げて、間違って理解している人がめっちゃいることを実感します。読んでいるあなたも高確率で意味が分かっていないと思うので、今すぐ調べてください。
「気持ち」・「知識」ときましたが、以下は技術(・経験)の話です。細かく書き出すときりがないので、それぞれサラッと書きます。時間があれば足すかもしれないです(時間が無いときにしか使わない言い回し。あったら書いてる)。
僕は特訓で現代文を指導するとき、本文を一緒に読みます。といっても、僕が音読しながら、「この漢字は何と読む?」「この言葉はどういう意味?」「この一文はどういう意味?」「この段落は結局何が言いたかったんでしょうねぇ?」と聞くような形です。キレイに言語化してくれる人は少ないですが、まあわかってそう、多分全然わかってないな(笑)、くらいの判別は付きます。僕がキレイに言語化したのを聞いたときの反応でもよくわかります。以下で挙げるのは、分からなかったときに、生徒さんが陥っていることの多いミスから抽出したものです。
・指示語を逐一意識すること
1つは、指示語が指し示している内容が理解できていないというパターンです。とはいえ、基本的なところではあまり差がつかない印象です。差がつくのは、以下のような文章でしょう。
「最近の空想科学小説の傾向について、ある文芸評論家は、それがあまりにも疑似科学的であり、怪談的であると非難していた」 |
「それ」がさしているのは何でしょうか。
①小説
②空想科学小説
③最近の空想科学小説
④最近の空想科学小説の傾向
「直前に登場した名詞が入る」、という程度の理解では選びきれません。先ほど「基本的なところ」と言ったのは、この程度の理解で何とかなるような場合です。たしかにそれで乗り切れる場合が多いですが、そんなに複雑な文章ではないはずの、上記の様な文章でも、読めない人がたくさん出てくるのです。仰々しく選択肢にされれば、意識的に読むのでまだ正答率が上がるとは思うものの(そう願いたい)、日ごろ文章を読む時には、これが自動でできないとおよそ役に立ちません。
正解は③ですね。小説が疑似科学的というのは乱暴すぎ(①は❌、「ある文芸評論家」は、(黎明期(れいめいき)、興隆期のものも含めた)空想科学小説全般について批判しているのではなく(②は❌)、最近のものに限定して批判している(③は⭕️)。「傾向」が疑似科学的・怪談的というのは意味不明(④は❌)。といったところでしょう。
・主語と述語の対応関係
これは「書き編」でも言うことになると思いますが、複文構造になっているような文章(主語述語で文ができるとして、その文の中に、別の主語述語のセットが入っているような文章)において、主語となっている言葉と直接対応する動詞を見誤ったり、結論を述べていると思われる述語となる動詞の主語が分からなかったりする生徒さんもよくいます。
この手のエラーは、文章の階層構造をしっかりとらえるということを意識的に行えるようにならない限り、治りません。適当に読み飛ばす癖がついているならなおさらです。もちろん、意識的にできるようになったうえで、自動化できないと、あまり役に立ちません。「あまり」役に立たないというのは、主語と述語の対応が取りづらいような複文構造の文章に出くわした場合、分かるまで何度か読むのが普通なので、自動化されていなくても、無意識に読み返して何とかなることも多いかなと思ったことからきた言い回しです。
ほかにも、①とりたて助詞・機能語、②『は』と『が』の区別、③集合の大小・包含関係を捉えること、④必要条件・十分条件、⑤相関関係・因果関係、などなどたくさんありますが、言語学や論理の話になってしまうので、今日はこの辺でやめにしておきます。「書き編」で触れるものがあるかもしれません(*)。
*たとえば、「「書き編」で触れるものがあるかもしれません。」という言い回しは、上にあげた①~⑤のうちのどれか(1つか複数)に、言及する可能性があるという意味です。①~⑤のいずれにも(全てに)触れるという意味でも、いずれにも(全部に)触れないという意味でもありません。この注で出てきた「にも」は①の話ですし、全部の話をしているのか部分の話をしているのかというのは、③の話です。「「書き編」で触れるものがあるかもしれません。」の「が」を「は」に変えると全く意味の違う文章になりますね。主語が関係する場合に限っていうと、「が」は格助詞で主格の意味であり、「は」は係助詞で他と区別するものです。「は」の場合は、主語とは言わず、題目語と言いますね。これは②の話です。
さらばじゃ。
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